福島県河沼郡会津坂下町:杵ガ森古墳

過日,稲荷森公園内(福島県河沼郡会津坂下町稲荷森)にある杵ガ森古墳と方形周溝墓を含む稲荷森遺跡を見学した。
稲荷森公園は,臼ヶ森古墳の南約400mのところにあり,公園敷地内に稲荷森遺跡が保存されている。公園敷地内の中央やや北寄りのところに杵ガ森古墳の墳丘がある。杵ガ森古墳は,全長45.6m・後円部直径25m・後円部高さ2mの前方後円墳とされている。現存墳丘の中で明確に視認できる部分は後円部とくびれ部の一部であり,おたまじゃくしのような形をしているが,元は,北西方向を向く大きな前方部があり,よく見ると前方部の形状がわかるように整備されている。
杵ガ森古墳を取り囲むようなかたちで方形周溝墓があり,その遺構を認識できるように公園が整備されている。現時点ではベストの方法であり,立派なものだと思った。完全に覆土して保護してしまうほうが良いという考えもあるけれども,いったん発掘作業を経てしまうと土質が次第に変化し,表土と識別できない状態となってしまうことがしばしばあるようなので,覆土だけではほとんど意味がないかもしれない。
古墳群の配置から推測すると,前方後円墳が造営された後に方形周溝墓が造営されたと思われる。そのことから,この地に屯田した人々の出自や社会構造を理解する上で大いに役立つだけではなく,方形周溝墓から前方後方墳に発展し,更に前方後円墳に発展したというステレオタイプのような硬直した考え方がほとんど役にたたないということを明確に示す極めて重要な遺跡と思われる。大國主命と少名彦名命の関係のような複合構造をもった集団が,(朝廷の命により)各地を移動しながら屯田し続けたと考えるほうが合理的だと考える。

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説明板


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北の方から見た杵ガ森古墳


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南東の方から見た杵ガ森古墳


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北西の方から見た杵ガ森古墳


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墳頂から見た前方部


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方形周溝墓(4号墓)跡


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方形周溝墓(3号墓)跡


現況の外見は児童公園のような感じになっているため,子供達が遊んでいた。そこが遺跡であるかどうかを知らないように見えた。親がちゃんと勉強して正しく教えないと,子供達にはわからない。説明板の文字を読める年齢になる頃にはこのような公園で遊ばなくなっているかもしれない。
他人が親切心から教えてやろうと思っても,当世ではたちまち不審者扱いされてしまうことが明らかなので,個別に尋ねられることがない限り,そのような親切心は一切起こさないようにしている。



[追記:2020年9月15日]

杵ガ森古墳を含む稲荷森遺跡の発掘調査結果の詳細は,会津坂下町史編さん委員会編『会津坂下町史 第4巻 資料編Ⅰ 考古』(平成29年1月31日)の11~21頁に収録されており,また,同書の3~7頁には杵ガ森古墳の詳細な解説がある。
同書の記載に基づき,方形周溝墓の番号を追加して記載した。


 会津坂下町:杵ガ森古墳
 https://www.town.aizubange.fukushima.jp/soshiki/30/282.html

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