水戸市:愛宕神社と愛宕山古墳

過日,愛宕神社(茨城県水戸市愛宕町)を参拝し,その周辺を拝見してきた。以前訪問したことがあり,今回が2度目の訪問になる。愛宕神社の基壇部となっている愛宕山古墳は,全長約136.5mの前方後円墳とされている。その前方部は,日下ヶ塚古墳車塚古墳などがある現在の大洗町の方を向いている。その方向は,太陽が昇る方向でもある。愛宕山古墳の後円部墳頂には愛宕神社の本殿のほか多数の境内社(三島神社,富士神社,水神社,稲荷神社など)があり,また,前方部には天満宮がある。これら全ての神社を参拝した。愛宕神社の主祭神は,火之迦具土神。拝殿及び本殿共に非常に立派なものだと思う。本殿の彫刻の彩色に特徴がある。
私が訪問した時には,後円部の下の方の部分及び周溝部分の除草作業をしている最中だった。そのおかげで墳丘や周溝の形状を丁寧に観察することができた。まことにありがたいことだと思う。説明板に示されている古墳の側面図を見ていると,古墳の姿が何やら大型軍艦のように見えてくる。このような印象は,石岡市の舟塚山古墳や東松山市の野本将軍塚古墳からも受ける。

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後円部の前(南側)に立つ愛宕神社の鳥居


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手水とその背後にある庚申塔など


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愛宕山古墳の説明板


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後円部にある階段


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愛宕神社の拝殿


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愛宕神社の本殿


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愛宕神社の境内地(後円部墳頂)の北側部分と境内社


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本殿背後(後円部北西端付近)から見える景色


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後円部から見た前方部


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前方部から見た後円部


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前方部にある天満宮


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前方部端(南東側)にある階段前の鳥居


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前方部東側の道路から見た前方部(手前)と後円部(奥)


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後円部と周溝部分


かつて,愛宕山古墳のある地域の段丘縁には,現存する愛宕山古墳と馬塚古墳のほかにも古墳があり,古墳群を形成していた。古墳群を形成する古墳は,この地域の支配者とその子孫の墓所だったのではないかと思われ,要するに,一体として支配者一族の権威を示し,人々に崇敬させるという機能を果たしていたと考えられる。特に愛宕山古墳は,とても大きな古墳であり,当時,墳丘には樹木が存在しなかったと考えられるから,その段丘縁から東方をかなり遠くまで見通せたと思われるし,また,古代の霞ケ浦や河川・沼沢地を往来する船舶だけではなく,かなり遠くからでも古墳群の威容を目にすることができたと想像される。この古墳群は,一般的には,那珂國造及びその一族の墓所と考えられている。那珂國造の政治的な立場に関しては,大きく分けると,地方豪族とする考え方と,朝廷の東方進出のための軍の上級軍人(方面軍司令官的な立場の者)とする見解とがある。後者の見解を基礎とする場合,現在の軍隊の組織等とは異なるものと推定されるので一概には言えないが,私見としては,侵攻した地域において屯田を実施し,侵攻先の地域の支配を確立し,現地における製鉄によって武器や防具等を整え,兵糧を蓄えた上で,更にその先を侵攻するということを繰り返す方式による軍だったと考えている。
なお,大国主の時代に國神として那珂國造またはその祖先もしくは子孫が存在しており,そのよぅな國神が愛宕山古墳の被葬者になっているとすれば,愛宕山古墳は4世紀~5世紀の古墳である必要性がある。しかし,現在の通説によれば,愛宕山古墳は,6世紀の古墳とされている。
一般に,江戸時代においても,支配者一族がその墓所を同じ場所に営み,大きな墓石を並べる例があり,例えば,将軍家とその直接の子孫の一族の墓所は著しく立派である。諸藩の藩主の墓所は,規模及び荘厳の程度・内容が異なるとはいえ,やはり立派である。近年,古墳の規模・構造と埴輪または威信財の種類に関する情報に基づく系統分類的な手法により,古墳被葬者の支配関係または序列関係を推測するという研究手法がめざましく発展してきているが,そのトポロジーのようなものとして理解することが十分に可能であるし,妥当でもある。
すなわち,人間の支配者及びその一族の考えることは,古代においても近世においても,基本的には全く変わらないものだったと言える。
私自身は普通の庶民の一員であり,国の全部またはその一部の支配とは全く無縁だし,経済的に大きな支配力をもつ立場になったこともないので,政治的・経済的な意味での「支配者の心理」を現実に体感したことは一度もなく,あくまでも素人の想像に過ぎないものではあるけれども,そのようなことを考えながら愛宕山古墳周辺を散策した。


 水戸愛宕神社
 https://www.mito-atago.jp/

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