国立博物館:特別展「国宝 東寺―空海と仏像曼荼羅」

本日の雑用を終えた後,ちょっとだけ時間があったので,上野の国立博物館で開催中の特別展「国宝 東寺―空海と仏像曼荼羅」を観てきた。

特別展「国宝 東寺―空海と仏像曼荼羅」
国立博物館平成館


素晴らしい展示館だと思う。来日中の外国人と思われる人も多数見かけ,もしかすると日本人よりも興味津々な外国人のほうが多いのではないかと思うくらいだった。

展示品は,原則として写真撮影禁止なのだが,帝釈天騎象像だけは撮影可能の指定となっている。

帝釈天騎象像
帝釈天騎象像


私がターゲットにしていたのは,菩薩像だ。「五大虚空蔵菩薩坐像」と「金剛宝菩薩坐像」を特に丁寧に見てきた。写真撮影禁止なので,後で図録を購入した。図録の写真はとても素晴らしいものだ。しかし,現物を直接に見ることを是非ともお勧めする。

予かじめ想定していた仮説は脆くも崩れたが,別の仮説が直ちに思い浮かんだので,この特別展を観た後,同じ平成館の中にある考古学展示の部屋に向かった。

ある埴輪がある。丁寧に復元されているが,かなり欠損がある。

この埴輪の頭部に金冠をかぶせると,東寺の菩薩像群の頭部と同じような感じになる。つまり,この埴輪は,菩薩を表現している可能性がある。

茨城県境町大字百戸マイゴオ出土埴輪
茨城県境町大字百戸マイゴオ出土埴輪


群馬県前橋市金冠塚古墳出土金銅製冠
群馬県前橋市金冠塚古墳出土金銅製冠


一般に,日本国のこの分野における学術は,明治維新の頃における廃仏毀釈の影響をまだまだ残しているように思う。しかし,非常に古い時代の様式または教義による仏教は,一般に理解されているよりも相当古い時代に渡来していたと考えるべきではないかと思う。文書史料を重視するとすれば,遅くとも中国の隋代にはかなり明確なかたちで仏教が伝来していることになっている。しかし,もっと古い伝来を考えるべきだ。ただし,鎌倉仏教以降の教義を前提とした理解ではダメで,空海が知ろうとして唐に渡り,そして知った密教及びそれ以前の真言仏教の教義を理解し,更に,拝火教やバラモン教と混在するような一種独特の世界が存在したかもしれないという空想力が大事だと思う。

東寺の菩薩像の頭部にある冠は,いずれも「旭日」を示すと思われるものが中央部分にある。これは,たぶん,「大日如来」と同じであるということを意味するのだろう。私としては,日本国の国旗の「旭日」が唐から由来したものかもしれないという点に特に意識をもつ。『唐書』に書かれている文字の理解は,それはそれで非常に重要であり,欠かすことのできないものではあるが,それはさておき,現実に遺されている文物を直接に観察し,想像力を膨らませることも大事なことだろうと思う。

「武内宿禰」の像も展示されていた。

この像は,修復の記録が明確であるという意味でも重要なものなのだが,たぶん,修復が間違っている。中央アジアの石人と同じように,口の周囲に濃厚に髭を蓄え,何かをもつ手が上であり,他方の手が下であり,そして,古代ペルシア系の聖杯を手に持つ姿が本来の姿なのだろうと考える。

いずれにしても,よい展示会だと思う。この機会を逃す手はない。



  特別展「国宝 東寺―空海と仏像曼荼羅」 / 平成館 特別展示室 2019年3月26日(火) ~ 2019年6月2日(日)
  https://www.tnm.jp/modules/r_free_page/index.php?id=1938

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