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沖縄では様々な帰化植物を観た。見つけるたびに一応写真だけは撮っておいたものの,私の自宅の周辺ではあまり見かけないものばかりで,その名前がよく分からないものが多い。とは言っても,「これは帰化植物に違いない」と直感的に思ったことが実に見事に当たっていることが多いのが不思議と言えば不思議。やはり,植物にも和風のものとそうでないものとがあるらしい。(笑) 港湾の近くで,イネ科植物のような感じの植物でありながら,イノコヅチの実のような形の実または花をつけた植物を見つけた。 触ってみると非常に鋭い棘が無数に生えており,皮膚に刺さるとかなり痛い。そして,ズボンの裾などにくっついて離れない。何とも困った植物だった。「これも帰化植物に違いない」と思って写真だけ撮っておき,出張から戻って帰宅してから調べてみた。どうやら,シンクリノイガ(新栗ノ毬)という植物らしいということが分かった。 シンクリノイガ(Cenchrus echinatus L.)は,イネ科クリノイガ属に属し,熱帯アメリカ原産で,日本では本州(関東地方以西),小笠原諸島,四国,九州,沖縄に分布する1年草ということだ。沖縄ではごく普通に観られる植物らしい。 さて,名前を確認してみて気付いたことがある。「シン」というからには「シン」でない「クリノイガ」があるのに違いない。調べてみると,確かに「クリノイガ(Cenchrus brownii Roemer & Shultes)」が存在した。日本で発見されたことのある帰化植物であるとはいえ,純粋なクリノイガはかなり稀な存在らしい。 クリノイガが存在すると分かると,直ちに次の疑問が生じた。「シンクリノイガ」の「シン」とは「真」なのだろうか,それとも,「新」なのだろうか? もし「真」であるとすれば,「偽」もあるはずだ。(笑) そこで,更に調べてみると,漢字では「新栗ノ毬」と書くことが分かった。なにゆえに「新」であるのかは分からないが,植物学上,「クリノイガ」が「シンクリノイガ」よりも早く認識されて属名も「クリノイガ属」と定められてしまった結果,あとから判明した「シンクリノイガ」が「新型のクリノイガ」とされるに至ったのではないかと想像する。現実には,日本各地に帰化しているものの大半はシンクリノイガであり,とりわけ沖縄にあるものはシンクリノイガと判断して良いということらしい。 なお,ものによっては,シンクリノイガ(Cenchrus echinatus L.)をクリノイガ(Cenchrus brownii Roemer & Shultes)の別名として扱っている文献もある。しかし,これは誤りのようだ。これまた推測に過ぎないが,シンクリノイガのsynonymにCenchrus echinatus sensu Steudel ex Döll, non L.があり,命名者以外の部分がCenchrus echinatus L.と同じ名前であるために混同したのではないかと思う。属名と種名とが同一であっても,命名者が異なれば別の種類の植物であることが普通なので,注意を要する。 私にとっては,分からないことを調べ,調べた結果に納得感を得ることは「快楽」の一つだと言える。かなり特異な趣味かもしれないけれど,とにかく分からないことが分かるようになると,とてつもなく大きな快感が得られる。そして,分からないことを調べることそれ自体もまた,この上なく楽しいことだ。この世に勉強ほど楽しいことはない。 Cenchrus echinatus L. http://www.ars-grin.gov/cgi-bin/npgs/html/taxon.pl?9795 Cenchrus echinatus L. http://www.plantatlas.usf.edu/main.asp?plantID=3678 Cenchrus echinatus Linnaeus http://www.efloras.org/florataxon.aspx?flora_id=2&taxon_id=220002515 Cenchrus brownii Roem. & Schult. http://www.ars-grin.gov/cgi-bin/npgs/html/taxon.pl?9792 |
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